―お試し読み―
西野 努 (西野 努)
1971年3月13日生まれ。奈良県生駒市出身。身長186cm・体重75kg。
神戸大学経営学部卒業後、1993年から9シーズンにわたって浦和レッズでセンターバックを務める。 現役引退後、同クラブスカウトを経て、2003年8月、MBA取得のために渡英。2004年11月、リヴァプール大学フットボール・インダストリーズ・MBA取得。
Player’s Eyes No.100 少しずつ見えてきた光!?
4月から、川崎フロンターレ戦・清水エスパルス戦と上位との対決が続き、中でも5月5日のグランパス戦は、ゴールデンウィークでもっとも注目のカードとなり、天候にも恵まれ5万5千人を超えるサポーターがスタジアムへ詰めかけた。ここのところ、チームの成績が徐々に良くなるにつれ、スタジアムに応援へくる観客の数も増えてきているように感じる。
ここ最近の浦和レッズは、最悪の状況は脱したと言える。少なくとも、個々の能力がピッチ上の各ポジションで発揮されるようになってきたため、観ていて可能性を感じることができるようになってきた。悪い時は、個の能力さえも発揮できない状況があり、個としても組織としても全く機能していなかったが、局面の打開が各ポジションで出来るようになってきたので、ゴール前でのチャンスが増えてきている。
新加入の柏木選手は、すっかりチームの柱となって活躍している。彼の運動量とゴールへ向かう威力はレッズの武器であり、ポンテ選手への負担も少なくなっているように思える。そして、何よりも田中達也選手の好調がチームに勢いを与えている。前にスペースが空いたときに、ゴールへ向かうドリブルを仕掛け、少しでも隙があれば、ミドルからでも角度がないところからでもシュートを狙う姿勢は相手にとっては脅威となっている。
こうして考えると、局所局所で、個々の能力で打開して得点するパターンは、2006年にJリーグを制した時のパターンとほぼ同じであると言える。
今、レッズが向かっているのは、もう一つ上のレベルであり、こうした個々の能力をつなぎ合わせて組織としてプレーするチームのはずだ。
例えば、バルセロナのメッシという選手のすごさは、個人の突破力ももちろんだが、周りの選手とのコンビネーションがさらに個の能力を高めているところにある。周囲の選手を使って自分が生きるプレースタイル、また、周囲の選手もメッシという選手の能力を発揮させるべくサポートしたりできている。
その観点からここ数試合を観ると、まだまだ、個々の局面打開に終結してしまっている。田中達也だけをおさえれば、相手守備陣はピンチをしのげるという事だ。そして、レッズとしては個々の能力が発揮出来ない状況になると、試合に結果がついてこない。言い方を変えると、まだまだレッズには上昇の余地があるということだ。フィンケ監督に与えられた時間は限られてきているのかもしれないが、中断明けのチームパフォーマンスにさらなる期待をしたい。
“ポンテ選手の去就について”
選手の編成は、チームの今後の鍵を握る。そして、主力選手ともなれば、チームのパフォーマンスと成績を左右する。私はどんな選手がチームを去ろうとも、確たる方針に基づいたチーム編成であれば良いと思っている。浦和レッズというチームは、Jリーグを制したサッカーから次のステージへ向かおうとしている(はずだ)。そして、選手の若返りも図っている。とすれば、ベテラン選手や主力選手の誰がチームを去ることになっても不思議はない。“情”としては、もちろんいつまでもレッズでプレーして欲しいと思うが、プロの勝負の世界は、“情”に流されてはいけない決断もしなければならない。
5月5日の試合後、スタジアムを後に浦和美園駅へ歩いていて思ったことは、あれだけ多くの人がレプリカのユニフォームを着て、好みの選手の背番号を身につけ、応援へ駆けつけてくれることがどんなにありがたくしあわせな事かということだ。クラブ経営という観点から、スタジアムでのサービスや関連ビジネスも当然大切だが、魅力あるチーム作りをして、強いチームを作ることが何よりもの重要課題だ(当たり前のことだが)。
最近、クラブはアジアでチャンピオンになり、チームだけでなく関連ビジネスにも力を入れてきている。一方でチームが魅力を失い、成績が落ち込んでしまうと、関連ビジネスもうまくいかなくなる。そのような負のスパイラルにはまり込んでしまいそうな状況にあったといえる。
今は、やはり何よりもチーム力の向上にすべての資源を投下すべきではないだろうか。そうすれば、関連ビジネスも放っておいても上手く回るはずだ。
“連載100回目”
浦和レッズの戦評を書き始め、100回目を迎えることとなった。選手の視点で試合やレッズについていろいろと書きたい放題書いてきた。その間、アジアチャンピオンになる事もあれば、チームがばらばらになっているシーズンもあり、元選手という立場からそのとき時のチームやクラブについて思ったことを綴ってきた。
今までこのコラムを書かせていただいたことに感謝すると共に、今後も出来るかぎりいろいろな角度からレッズについて書いて行きたいと思う。 (Player's Eyes-No.100より)
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