―お試し読み―
三浦泰年 (ミウラ ヤストシ)
高校サッカーの名門の一つ静岡学園からブラジル・サントスFCでのサッカー留学を経て、1986年に読売FC(ヴェルディ川崎を経て、現・東京ヴェルディ)に入団。卓越した技術と豊富な運動量でチームの柱として活躍した。現役時代は実弟、三浦知良氏とともに日本のサッカーを支える選手として人気を集めた。現役引退後は日本サッカー協会公認S級コーチライセンス取得を取得し、現在もサッカースクール講師、解説者など幅広く活躍中。
「23人目に入るのはカズ、三浦カズ」。
「ミッドフィルダーは遠藤保仁、中村俊輔、中村憲剛、小野伸二」。
「フォワードは前田遼一」。
そんな『サプライズ』を期待していたわけではないが、5月10日に行われた南アフリカW杯を戦う日本代表メンバー23人の発表会見に、日本国民は「これならいける」という可能性を感じたのだろうか?
僕が23人の名前を聞いて感じたのは、まず「日本代表が2年半チームとしてやってきたことに対して、忠実に献身的にプレーできるメンタルを持った選手選考だな」ということ。そして12年前とは違い、今まで戦ってきた“仲間”をリスペクトした選出だということ。
もちろん、その誰もが日本代表に相応しい、実績と経験、テクニックとメンタル、そしてポテンシャルを持った選手であることは間違いない。また、仲間をリスペクトした選出というのも、チームを作る上では本当に大事なことでもある。規律をもとに、集団的にも、戦術的にもコレクティブなチームを作ろうとしていることもよくわかる。おそらく、それが『日本らしさ』だと言いたいのだろう。
だが、この23人には今、Jリーグを必死に戦っている、1番調子の良い選手の名前はなかった。これは日本のサッカー発展を思えばこそ、残念なことだ。例えば、首位の清水を引っ張るMF小野伸二。彼はしっかりと4年に1度のW杯に照準を定め、チームを支えていた。「誰からも認められる選手」としてアピールしてきた。磐田のFW前田遼一も同じだ。彼については、予備登録メンバー7名に入ったようだが、彼は昨年のJ1リーグ得点王であり、今季もしっかりと得点を重ね、現在も得点ランクの首位にたっている選手だ。しかも首位を争うような機能しているチーム状況ではないにも関わらず、その中で得点を続けていることは数字以上に評価されるべきだと思う。だが、彼の名前もまた『23人』にはなかった。
もちろん、かつてオシム前監督が言ったように、選手を代表メンバーに選んだ時点で、その選手の資質や能力を分かっていると考えるなら、Jリーグでアピールする必要はないのかもしれない。だが、同じメンバーでやってきたチームが最後の最後で動きも鈍く、機能しなかったことを思えばこそ、現時点でのJリーグで調子をあげている選手を『23人』に入れることで、『不動』のチームに危機感を生ませることも必要だったのではないかと思う。見方によっては、そうした刺激は『本田』という存在によって生まれてる宇とも言えるが、それは彼が欧州チャンピオンズリーグであそこまでの活躍をしたからだろう。それがなければ、例えロシアリーグで結果を残していたとしても、どういう結末を迎えていたかは何となく想像がつくところだ。と考えても、僕は、今回の『23人』は、日本代表がもっと可能性を秘める選択もあった中で、今の時点で『見える』力の中でベストチョイスしたように感じている。新たな『刺激』による化学反応を恐れ、チームの和を優先したのだろう。もちろん、それが悪い訳ではない。それを『日本らしさで戦うこと』だと言うのなら、武器になることだってあるのだろう。
いずれにせよ、ここからはW杯に向けての準備が始まる。僕の予想としては、同じグループに属した4ヶ国が普通の力で戦えば、日本は冷静に考えて、4位だと思っている。日本のコンディションが最高で、周りが悪ければ、もしかしたら勝ち点5か6を獲れる可能性もあるが、逆にどの国もしっかりとコンディションを整えて挑んできたら、勝ち点1を獲ることでさえ大変で、3連敗もあり得ると思う。なぜなら、『パーフェクトなコンディションで臨んだとしても他の3国に勝つのは難しい』というのが今の日本の現実的な力だと思うからだ。だからこそ、今後日本はまず、緻密なスカウティングを行い、グループリーグをベストコンディションで挑めるように調整していかなければいけない。それがきっちりと出来て、初めてスタートラインに立てると思うからだ。つまり今の日本の力を冷静に見れば、日本がパーフェクトではない状態で勝てる相手は一つもない。それを肝に銘じて南アフリカに乗り込んで欲しい。
僕は今回のW杯を、前回と同じく『メディア』という立場で見ることになった。大好きなサッカー、大好きな日本代表だからこそ応援したいところだが、日本が本当の意味で成長していくために、厳しい目でその戦いを伝えていきたいと思っている。育成世代の指導に携わっていると、子供というのは、時に励ましたり、見守るだけではなく、厳しく、大きな声で怒らなければ成長しないといけないと思い知らされる。それと同じで、日本代表に対する世間の目も、メディアも、ただ応援するだけではいけない時代がきている。厳しさと温かい愛の両方で見守らなければ成長はない。僕が冒頭に書いた3人は、果たして本当にいなくて大丈夫なのか?その答えは6月、南アフリカで明らかになる。
(VOL.31~ 南アフリカW杯日本代表選出 )。
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